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さぬきうどん
 秋田の稲庭うどん、群馬の水沢うどん、山梨のほうとう、名古屋のきしめん、三重の伊勢うどん、大阪のきつねうどん、福岡の丸天うどん、大分熊本の団子汁など日本全国うどんは多いが、私は、確かな歯ごたえがあり、舌ざわりがつるつるしたさぬきうどんが好きです。
  うどんは、弘法大師が804年遣唐使として中国に渡り、真言密教を学び、その時にうどんの製法をも持ち帰ったと伝えられています。昔は、うどんは接待食や行事食として、日本全国に広がっていました。明治になり、製麺の機械化が進み、麺は工場生産化の時代になり、家庭でのうどん打ちの技術は忘れ去られ、滅びて行きました。その大半が滅んで行った中、今も一部の地域にのみ技術が残っています。その代表が讃岐です。”讃岐”は香川県の旧国名ですが、今ではうどんの代名詞のようになっています。
 故大平正芳総理大臣は、高松空港に到着するとすぐにうどんを食べたそうですし、東京へ出発する時も必ずうどんを食べてから搭乗していたそうです。平成16年1月瀬戸内海の豊島の産業廃棄物を視察した小泉総理大臣は、地元婦人会の人達が作ったうどんを食して、”このうどんのように腰の強い聖域無き構造改革を進めたい”と決意を述べました。
さぬきうどんの秘訣は、1うどんの腰の強さと、2出し汁の2点です。1人分は中力粉100gですので、人数に応じて中力粉と食塩水を倍数して作って下さい。
男性に勧める理由は、@女性で手打ちうどんの出来る人が殆どいない。男性の腕の見せ所です。A踏む、捏ねるなど力がいるので男性の方が腰の強い美味しいうどんが出来る。B中力粉は500g98円と安価なために、1回くらい失敗しても安心。食塩水濃度と量さえ間違えなければ、必ず美味しいうどんが出来ます。是非男性の皆さん頑張って作ってみてください。
1うどんの材料;A食塩水、B中力小麦粉(一人前100g)、C打ち粉(コーンスターチ、又は片栗粉) コーンスターチの方が片栗粉に比し茹で汁が粘らない
       道具;麺棒(直径2〜3cm、長さ60〜100cm)、ボウル、ビニール袋(市販の16、17号サイズ)
2麺の作り方
 @食塩水濃度と量(これが大切。必ず計量して下さい。)
季節 中力粉g 食塩濃度% 食塩水g
100 46〜50
春秋 100 44〜48
100 10 42〜46
 Aあわせる
   中力粉をボウルに入れる。食塩水を5、6回に分けて打ち水をする。初めは粉をゆっくり両手で持ち上げるようにして、静かに粉と食塩水と合わせて行く。
 B混ぜる
   指は熊手のように広げて、粉と食塩水と空気が十分に混ざり合うように粉を持ち上げては落とす動作を繰り返す。(こねない!団子にならないようにする。)
    『コツ』小麦粉の色が白色から淡黄色に変り、粉全体が均一なそぼろ状になったら完了。
 Cこねる
   混ぜるが終えたら、ボウルに散らばった粉の固まりを両手で寄せながら、団子を作るように押し固める。
  D練る
   生地を厚手のビニール袋に入れて、足のかかとでクルクル回りながらまんべんなく踏む。厚さが1cmの平たくなった生地を団子作りをして、足踏み、団子作りを2、3回繰り返す。
 E熟成
   ビニール袋に団子状の生地を入れて熟成発酵させる。夏は30分、春秋は1〜2時間、冬は2〜3時間(急げばコタツの中に入れると1時間)。これによりうどんに弾力と粘りが生まれコシが出てくる。
 F手打ち
   生地(量が多いとDと同じく足で踏んで延ばした後に)を麺台の上に載せて、手と麺棒で厚さ2cmくらいの平板状に広げ、打ち粉を振りかける。
麺棒を生地の真ん中に置き、押しながら先へ転がして延ばして行く。生地を180度回転させ、同じように反対側も延ばす。(グルテンの繋がりが良くなり腰が強くなる。)次に生地を90度回転させ、同じように延ばし、さらに反対側も延ばして、ほぼ正方形になるようにする。生地の手前から麺棒を転がして向こう側へ転がして行く。巻いたまま台上を体重をかけて巻き延ばしてゆく。生地を麺棒から広げ、90度回転させた位置で再度麺棒に巻き取り、延ばして行く。打ち粉を時々しながら3〜4mmの厚さになれば出来上がり。
  透かし打ち(高度なさぬき独特の技術)。上達した人は、上の代りにすかし打ちに挑戦
     生地を綿棒に巻き付け、生地を巻いた綿棒に打ち粉をかけ、綿棒を押しながら前方へ転がす。綿棒を前方へ転がしたら、すぐに軽く持ち上げて手前に戻す。この作業を20回繰り返す。
   延ばした生地全体に打ち粉をして、麺棒に巻き取り、まな板の上に屏風たたみ(上に行くほど狭くなるように3、4段の山形)にし、麺棒を横から引き抜く。
 G切る
   包丁を前に押し出すように使って生地の端から3mmの幅に切って行く(茹でると2倍の大きさになる)。
   切り終ったら両手で麺をさばき、麺についている打ち粉をよく払落とす。
H茹でる
   出来るだけ大きな鍋に湯を入れて沸騰したら、一度に入れず、ぱらぱらと麺を落とすように入れて行く。強火で浮き上がれば長箸でかき回す。
   ふきまける時は火力で調節する(水打ちはしない)。
I水洗い
   釜揚げの場合は5〜6分、かけ、冷やし、ザルの場合は8〜10分湯でて、ザルに移して、すぐに冷たい水で手早く揉み洗いする(打ち粉がうどんについてぬめりになっており、これを洗い流すのが目的)。良く水洗いした麺はすぐザルに打ち上げる。
3白出し汁の作り方
煮干しイリコ、出し昆布、鰹節を入れてダシを取ります。味醂少々、薄口醤油(つけ汁には濃い口醤油とたまり醤油)でお好みに整えます。
  ここは秘伝で女房にも教えません。そしてショウガ、ネギなどの薬味を添えます。
  私はかけうどん(素うどん)と釜揚げうどんが一番好きです。海老のかき揚うどんも美味しいですね。

釜揚げうどん
打ち込みうどん   農村の味とも云われるさぬきの郷土料理
 鍋にダシをはり、肉、牛蒡、ネギ、椎茸、大根、白菜、人参、豆腐などの具を入れ、沸騰させる。沸いたら、合わせ味噌で味を付け、麺の作り方Gで切った麺を鍋に入れて、8分ないし10分煮る。
味噌仕立ての汁の中に溶け込んだ讃岐うどんの味が美味しい。讃岐では冬に良く作っられていた郷土料理です。

寒い日には、是非挑戦してみて下さい。
その他のうどんレシピは加ト吉のHPをみてください。
小麦粉
 グルテンというタンパク質含有量の違いによって、作るのに適する食品が異なる。グルテンが多い順に強力粉、中力粉、薄力粉と分けられ、グルテンが多いほど弾力がある。強力粉はパンや中華麺、中力粉はうどん、薄力粉はクッキーや天ぷら粉などに使われる。
塩の働き
@グルテンの粘りを高める:小麦粉に塩を加えて練ると、小麦粉に含まれるグルテンの働きが高まり、粘りが強くなる。これが手打ちうどんの腰の強さの秘訣です。素麺はグルテンの働きを極限まで引き出す量の塩が加えられた小麦粉製品です。
A水分を引き出す:野菜の塩揉みなど、野菜に塩を振りかけておくと、浸透圧現象により水分が出てくる。
B防腐剤として:食塩濃度を高めると、細菌の多くは繁殖出来なくなり、さらに塩分濃度を高めると、生存すら出来なくなる。
C発酵を助ける:塩分濃度が5%以上になると、食べ物は腐りにくくなります。この環境でも、発酵に必要な乳酸菌や酵母菌は繁殖することが出来るために、味噌や醤油を作ることができます。
Dタンパク質を固める:蛸のぬめリを取るときに、塩で揉むと、ぬめリは取れるが、タンパク質が変成して固くなる。また鯛の塩焼きのように鯛の外側を塩で固めて焼くと、鯛の表面が早く固まる。その結果鯛の美味しい汁が解け出してしまうのを防ぐ。 
Eリンゴの褐変を防止する:リンゴに含まれるポリフェノールオキシダーゼという酵素による酸化反応を0.3〜0.4%の食塩水で止めることが出来る。
F野菜の発色を安定させる:野菜を塩揉みすると、野菜の緑、ナスビの紫色が褪せない(ぬか床漬け)。
G呼び塩:真水で塩抜きすると、表面だけが水っぽくなってしまうし、苦み(塩化マグネシューム)が残る。塩出しするには、1.5%の食塩水でゆっくりすると良い。
H甘みを増す:おしるこに、砂糖濃度30%に対して0.5%の塩を加えると、塩辛くならずに、砂糖の甘みを引き出す。
塩一口メモ
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